研究概要 |
申請した計画案に対する現時点での成果を以下に示す. 1.複数プロセス間で共有されるオブジェクトの一貫性保持機能の設計 更新および参照時に,それらの頻度情報を基にして,最適なオブジェクトの個数および場所を決定するアルゴリズムを,通信対象数に通信コストが比例するような分散環境に対して設計した.次に,分散問題解決の考えを基に各オブジェクトの複製自身が,自分自身の生死を決定するようにし,分散環境上での処理やデータの集中の回避を実現した. 2.分散計算を実現する処理系の作成 対象問題プログラムから共有オブジェクトの一貫性保持機構(通信機能.配置決定アルゴリズム)を隠蔽し,プログラマには共有資源オブジェクトであることを意識させない実装を行なった.また,LAN上での分散計算環境を実現するため,TCP/IP socketを用いたデータ交換機能を処理系上に実現した. 3.処理系の効率評価 socketを用いたプロセッサ間通信機能と共有オブジェクトクラスの共存は現在まだ実現されていないため,単一プロセッサ内でのシミュレーションによって提案した配置アルゴリズムの評価を行なった.巡回セールスマン問題を用いた実験では,共有オブジェクトの利用状況が異なる2つのプログラムのどちらにおいても,望ましい配置への動的な適応が観測され,その有効性が検証できた. なお,1および2の設計方針については本年度の情報処理学会プログラミング研究会にて発表を行なっている.それ以降の成果に関しては,プロセッサ間通信機能と共有オブジェクトクラスの結合を行なった後の実験データを基に発表を行なう予定である.
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