研究概要 |
ここでは人工生命研究の中にあって,近年注目を集めているデジタル生態系に関する研究に着目した.すなわち,デジタル生態系のシミュレーションでは生態系内に設定された生命体プログラムから出発し自発的に様々な変種プログラムを生成する.この現象はプログラムの最適化と見ることができ,任意のプログラムに応用ができればプログラムの最適化・適応的自動合成手法として期待が持てると考えられる.本研究はこのデジタル生態系に基づくアプローチを“エコプログラミング指向"と呼ぶことにし,工学的応用を目指す立場からデジタル生態系を利用したプログラム最適化に関する研究を行なった. エコプログラミング指向の実現に向けてその基本的枠組みを検討するために,以下のことを行った; 1.コレクティブ・アプローチに立脚した手法であるとの観点から,生態系的なマルチエージェントの枠組みを利用した問題解決を試みた.この際,個々のエージェント群の処理能力には限界があると見て取れるゆえ,機会主義的に振舞いながらも自己の行動に対して耐性と締めのバランスを取ることによって問題解決を図る枠組みを提案しその有効性を,いくつかのプランニング問題に適用して確認した. 2.自律分散システムの知見を利用し,原子プログラムレベルに自律的ダイナミクスを埋め込む手法として,ハイパーサイクルに着目したモデル化の試みを行った.これは既存のプログラム形態と環境である場をつなぐ役割を担うと考えられるものであり,この上に展開されたダイナミクスによって問題解決器としての応用可能性を広げるものと期待されるのもである.しかし,現在の状況では,ダイナミクスの成長を十分に行うことが困難であり,この点について課題が残る結果となっている.
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