研究概要 |
1.名辞論理体系をベースに,日本語におけるいくつかの高階的意味表現の論理的な意味解析を行った.ここで高階的意味表現とは,「太郎はゆっくり走る」や「太郎が階段を降りる音」,「太郎が花子を嫌う理由」等,述語論理ベースに意味を記述しようとする高階論理になるものを指す.述語論理はすべての意味を,個体と個体間の関係として捉えるため,このような表現は高階論理式にせざるをえなかった.一方,名辞間の関係を直接的に記述できる名辞論理おいては,真の高階命題を導入することなく,このような表現が扱えることが分かった.すなわち,名辞論理の動詞命題に,様々な状況を表す状況リストなる連用修飾構造を新たに導入することで,このような高階的表現の意味記述を可能とした.さらに,従来の言語学的分類で外の関係と呼ばれていた連体修飾構造を,その論理的構造からいくつかにタイプ分けできることが分かった. 2.より柔軟な知識表現を可能とするため,名辞論理にオブジェクト指向型論理の発想を取り入れた新たな枠組みを試験的に構築した.特に,動詞命題をイベントオブジェクトとして捉え直し,名詞概念を表す通常のオブジェクトと同等に扱う方法を考えた.これによって,動詞命題間の演繹関係が,オブジェクト間の階層関係(is-a関係)として取り扱えるようになった.またこのような枠組みの応用性を見るため.ごく基本的なミニマム体系をベースに,実際の日本語における名詞句「AのB」の意味解析を行った.今回の試験研究により,このような論理的枠組み有用性が確認できたので,今後は厳密な論理体系として構築(意味論や公理の厳密な定義の記述)していく予定である.
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