研究概要 |
研究代表者は類似した既知知識の重要性に着眼し、類推的一般化と呼ぶ類推を応用した新しい帰納学習の考え方について既に提案している。これは、過去の経験と照らし合わせながら、与えられた事例を汎用的な知識へ一般化することにより、単一例題からのルールの学習を可能とするものである。 本研究では、この類推的一般化の考え方を拡張し、その厳密な定式化を図った。また、この定式化に基づく学習システムを計算機上に構築することによって類推的一般化の学習特性について実験的に考察した。 具体的には、類推的一般化において類似した既存知識を決定する際に最も重要となる「極大に類似した原子式集合の決定可能性」に関する諸定理を与えた。これらは、既存のルールを構成する原子式集合と例題を構成する原子式集合との間に対応が存在する限り,新しいルールの学習が可能であることを保証するものである。また、構築した学習システムによる構文解析知識の学習実験に対する分析結果を通して、類推的一般化により,完全に未知の概念に関するルール,あるいは既存ルールと大きく構造が異なるルールの学習は困難であるが,関連概念や類似知識を備えることにより,単一の例題からでも妥当なルールを導くことが可能であり,その学習過程は,ある程度人間の学習過程に類似していることを確認した。
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