研究概要 |
本課題では,科学的法則を発見する機械学習アルゴリズムついて研究を行ない,次の成果を得た. 機械学習とは人間の持つ学習機能をコンピュータ上で実現することである.実験,観測データからコンピュータに科学的法則を発見させることを事実からの機械発見という.機械発見の本質が論駁推論であり,論駁推論可能な仮説空間は機械発見が可能であることがわかっている.論駁推論アルゴリズムは,特別な帰納推論アルゴリズムであり,次のように動作する.アルゴリズムにデータを与えたとき,データを説明する仮説が仮説空間にあるときには正しい仮説を同定し,そうでないときには,データを説明できる仮説が仮説空間にないことを知らせて停止し,仮説空間全体を棄却する. 最近,言語を対象として機械発見の計算論的学習理論が創始され,機械発見の理論的基礎が確立された. 本研究では帰納的関数の論駁推論可能性を調べて,機械発見の理論的基礎を与えた.機械発見の現実的理論を展開するため,帰納的関数を計算する具体的なプログラミング系の論駁推論可能性を調べた.ループ関数と単純関数のプログラムを具体的プログラミング系として,このプログラミング系が計算する関数のクラスの論駁推論可能性を調べた.ループ命令の入れ子の深さがnであるループプログラムで計算できる関数全体のクラスをF Loop(n)で表すと,F Loop(0)は論駁推論可能であるが,F Loop(n)(n≧1)は論駁推論不可能であることを証明した.論駁推論不可能な関数のクラスは,論駁推論可能な部分クラスの無限列で近似できれば,実質的に機械発見が可能となる.そこで,単純関数を計算する命令を用いて,F Loop(1)を近似する論駁推論可能な部分クラスから成る無限列を構成した.
|