近年の情報システムや社会システムは複数のエージェント達が大規模なデータベースを共有し、その上で自立的に動作する形式でモデル化される。本研究の目的は、過去の履歴データを用いてこの多エージェントシステムの行動をシミュレートする、というデータベースの新しい利用方法を確立することである。次の二点が本年度研究の成果である: 1: 実際のゲーム形式シミュレーションで扱われている多エージェントモデル(例: 都市開発モデルや市場取り引きモデル)を対象に、データベースを用いてその行動をシミュレートする際のモデル記述方式を明らかにしたこと。 →具体的には、対象系が変化していく過程の記述を、「多エージェントによる分散制約充足問題とその実行結果にる内部状態データベースの更新操作」の繰り返しによって行なう、という設計方法を提案した。さらに、この方針に基づいて従来からボードゲームで用いられている多エージェントモデルに対して履歴データベスを使ってそのシミュレーションを行なう事例を示し、本提案方式の有効性を示した(文献2)。 2: 上記1で提案した設計方針に沿って記述された一般的なシミュレーション問題に対し、これを効率良く実行するデータベース処理算法を提案し、処理系を試作して提案算法の有効性を示した。(文献1)。 これら二点の成果により、データベースの新しい利用方法として本研究課題の有用性を主張できる。
|