プラズマ中に金属アンテナを挿入して誘導放電を行うと、プラズマ電位が上昇してユニポーラ・アークが起こり、放電が不安定になる。通常、これを抑制するためにアンテナを絶縁物で被覆してプラズマと隔てているが、アンテナ給電点付近のプラズマと接した絶縁物表面上には負の直流バイアス電圧が現れ、イオンスパッタリングにより、絶縁物が劣化、損傷してしまう。そこで、本研究では、これまで困難と言われてきた、絶縁被覆を一切使用しないオール・メタル・アンテナによる誘導RFプラズマ源を開発し、従来の絶縁被覆アンテナを用いた誘導プラズマ源との比較を行うとともに、水素負イオン生成用のプラズマ源としての評価を行った。 高周波電流の流れる誘導アンテナに直流電流を重畳したところ、アンテナ導体の周囲に磁場が形成されることを確認され、またその磁場はアンテナ近傍で特に強く存在し、それから離れるにつれ急激に減衰することがわかった。この直流電流を重畳したメタルアンテナを用い、水素プラズマを生成したところ、直流電流を200A程度まで大きくすることによりプラズマ電位はおよそ30Vまで低下させることができた。これは絶縁被覆アンテナの場合とほぼ同じであり、またプラズマ密度についても同様であった。さらにプラズマ電位に対する磁場の効果を1桁以上密度の高いアルゴンプラズマで検証したところ、水素プラズマと全く同様の結果が得られ、高密度プラズマの生成に本手法が有効であることが示された。
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