近年の核融合炉を目指した研究の中で、核反応を阻害する核燃焼後のヘリウムの高効率排気及び制御は、重要な問題の一つとされている。プラズマからリミターに到達した高速のHe^<2+>はリミターで中性化され排気されるが、中性化されたヘリウムの一部はリミター近傍のプラズマで再びイオン化され、低速のHe^+としてプラズマ中へと逆流し、ヘリウム排気の効率を低下させる原因となる。従って、このHe^+の逆流を抑制し、ヘリウム排気の効率を上げることが、ポンプリミターの重要な課題となっている。本研究の目的は、プラズマからリミターに入ってくる高速のHe^<2+>には影響を与えず、ヘリウム排気の効率を低下させているこのHe^+の逆流のみを、He^+のイオンサイクロトロン周波数近傍の高周波ポテンシャルバリアを用いて選択的に追い返し、再びリミター内の反射板で中性化して排気効率を上げる、という新しいヘリウム除去法を直線型実験装置に適用し、大型閉じ込め装置への適用の基礎とすることとした。 実験では、直線型実験装置においてマイクロ波プラズマ源の前面に矩形断面のL字型ダクトを挿入し、終端にプラズマ中性化のための反射板を設け、背後を分子ポンプによって排気し、ポンプリミターを模擬する。このL字型導波管の中に対向したTYPE III型アンテナを設置し、He^+のイオンサイクロトロン周波数近傍の高周波を印加することによって、He^+に働くポテンシャルバリアを形成する。現時点で実験装置の設計は完了したが、マイクロ波電源の故障等により、実験を行うまではいたらなかった。 計算機シミュレーションにおいては、TEXTORトカマク装置で得られたプラズマパラメーターを用いてアンテナも含めた2次元波動計算を行い、TYPE III型アンテナの生成する高周波電場分布を求め、さらに高周波電場を増加させることによってHeの排気効率が改善されることを示した。
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