研究概要 |
本研究では高融点材料であるボロンを蒸気化してECRイオン源(2.45GHz)に導入し,その多価イオンを生成することを目的とする.安全な固体材料からボロン多価イオンを生成する際,スパッター法に比べ蒸発法による導入の方が電離効率は高い.イオン源の動作ガス圧と同程度の蒸気圧を得る為には温度は約1500℃程度が要求される.純ボロンパウダーを入れた蒸発源はボロンナイトライド(BN)のルツボを用い,タンタルヒーター(0.8mmφ,50cm)にDC電源又はリングトランスにより電流を通電し加熱を行う.非接触放射温度計により温度測定を行なった.熱輻射を抑える為にタンタル箔による2重シールドした構造とした.ルツボ製作に当たりイオン源とは独立な真空装置により予備実験を行なった.水晶発振式の蒸着モニター及びシリコン基板への堆積膜のオージェ分光による組成分析でボロンの蒸発を確認した.ルツボに対して要求される電力は約400Wであった.次にECRイオン源においてボロン多価イオン生成を行なった.ルツボはイオン引き出し電極と対向するエンドプレートからミラー磁場の軸上に沿って挿入した.ミラーのボトムに形成したECR共鳴点から約15cmの位置である.プラズマ生成の為のマイクロ波入射電力約100W,圧力約5×10^<-4>Pa(N_2),引き出し電圧10kVの実験条件でイオン電流の価数分布の分析を行なった.その結果,ボロンイオンは3価まで観測された.スパッタリング法(40mmφLaB_6ターゲット)の場合と比較して,本実験ではボロン原子のフラックス量が少ない(約1/4)にもかかわらず,1価電流では同程度,2,3価では10倍以上に飛躍的に増大した.今後の課題としては焼結されたBNルツボから加熱により窒素ガスが放出されることと,ルツボの加熱効率が悪いことである.これらはそれぞれパイロリックBNの使用と形状を小さくすることで改良されると考えられる.
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