磁気流体ダイナモの物理機構の解明を目指し、計算機シミュレーションによる研究を行った。考察した物理系は次の通りである。半径の異なる二つの球面にはさまれた球殻状の容器を考え、その内部に磁気流体が閉じ込められているものとする。内側の球面は高温、外側の球面は低温にそれぞれ一定の温度に保たれているものとする。球の中心方向に重力が働き、球殻全体は一定の角速度で回転している。このような回転球殻中での磁気流体の熱対流運動を磁気流体方程式を差分化する方法で解いた。今年度の研究を通じて得られた結果は次の通りである。 1.対流運動は円柱状の対流胞(対流柱)の集まりとして組織化される。 2.対流柱には高気圧柱と低気圧柱の二つの種類がある。 3.電気抵抗が十分小さいときには、磁気流体ダイナモにより強い磁場が生成される。 4.磁場のエネルギーは対流の運動エネルギーの十倍以上にも達し得る。 5.あるパラメータ領域のもとで生成される磁場成分を分解すると、双極子磁場が最も強いモードになる。 6.その双極子磁場成分の生成機構は対流柱内での流体運動による磁力線の変形と引き延ばしで説明できる。 7.また、この双極子磁場生成機構は古典的なα機構の一つとしてで理解できる。 8.α機構で生成された磁場は球殻の外側球面近くでは、低気圧柱の内部に集中する。 9.この現象は低気圧柱内部の流れ成分により引き起こされることが判明した。 以上を簡単にまとめると、磁気流体ダイナモによる双極子磁場生成は円柱状の対流胞構造の自然な帰結であることが、この研究から明らかになった。
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