高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価のための基礎研究として、研究例の限られている、ベントナイト緩衝材の主たる構成粘土鉱物であるモンモリロナイト中のNa^+イオンの見かけの自己拡散係数を測定した。乾燥密度1.0〜1.8×10^3kg m^<-3>に圧密したNa型モンモリロナイト中でのNa^+イオンの見かけの自己拡散係数は、拡散温度278〜323Kにおいて、1.2×10^<-11>〜1.2×10^<-10>m^2S^<-1>であった。見かけの自己拡散係数の温度依存性から求めた拡散の活性化エネルギーは16.8〜25.0kJ mol^<-1>であり、乾燥密度の増加とともに増加する傾向にあることを見出した。また、得られた拡散の活性化エネルギーは、低乾燥密度試料においては自由水中のNa^+イオンの拡散の活性化エネルギーである18.4kJ mol^<-1>より低く、高乾燥密度試料においては逆に高い値であった。これらは、モンモリロナイト中のイオンは自由水に近い状態にある空隙水中を移行するとした従来からの空隙拡散モデルでは説明できない。一方、モンモリロナイト試料の飽和含水率およびX線回折により求めたモンモリロナイト試料の層間距離は、乾燥密度の増加とともに減少し、拡散の活性化エネルギーとの間に相関が認められた。従って、本研究では、圧密したモンモリロナイト中のNa^+イオンは自由水中の拡散とは異なった機構で移行しているものと考え、Na^+イオンの拡散経路として主としてモンモリロナイト層間を考え、その拡散への寄与について考察を加えた。
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