研究概要 |
本研究では、細径のファイバーシンチレータを束にした中性子スペクトロメータの開発のための検討を行った。 シミュレーション計算から20MeV以下の中性子エネルギに対しては直径0.2mm程度のファイバーが最適となったが、本研究では、原理の確認、問題点の洗い出しが主目的であることから、検出効率とのかねあいで1mm径のファイバーを用いることにした。1mm径でも18MeV程度の中性子エネルギではピーク状の応答を示すため、上記の検討を行うには十分である。検出器の長さは10mm、アブソ-バの材質は銅とし、これらは加工性の点から決定した。ファイバーは2mm間隔で200本(20×20)埋め込んだ。 原理の確認、応答関数の測定、問題点の検討はCf-252中性子源を用いる予定であったが、実験は、より厳密な検討を行うために加速器により14,18MeV中性子を発生させ行った。その結果、1)応答関数は予想したものよりも大幅になまったものとなる、2)指向性がある、3)γ線バックグラウンドの寄与は無視できることが判明した.2),3)については本検出器の原理から予想されたものであり、本検出器は理論通りの動作をしていることが確認できた。1)については、原因究明の結果、ファイバー中での光の減衰がカタログスペックよりも大幅に大きいためであることが判明した。そこで、実際の光の減衰の効果をシミュレーションに組み込んで比較すれば実験結果と計算値が一致することが確認できた。 このようなことから、本検出器は原理的にはスペクトロメータとしての利用が可能であるが、最大の問題点はファイバー中での光の減衰であると考えられる。光の減衰を少なくする手法としてはいくつか考えられるため、今後研究を進めていく。
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