研究概要 |
レーザー共鳴イオン化分光法により鉛原子の第1イオン化限界下の高励起状態の分光を行い、その結果を用いて解析も行った。 実験は以下のように行った。第1段目のレーザー光(566nm)を非線形結晶のBBOにより2倍波の283nmの紫外光として抵抗加熱により原子ビームとなっている鉛に照射することにより、基底状態である6p^2^3P_0を第1励起状態6p7s^3S^0_1(35287.22cm^<-1>)へ励起した。その後、第2段目のレーザーにより高励起準位へ励起し、電場あるいは光子によりイオン化した。イオンはTOF(飛行時間型)質量分析器をとおすことにより同位体に分離してマイクロチャンネルプレート(MCP)により検出した。2段目のレーザー光の波長を掃引することにより高励起準位のスペクトルを得た。準位の全角運動量J値は偏光分光を用いることにより決定した。励起状態のエネルギー値を決定する際は、2段目のレーザー光の波長はウランのガルバノセルとエタロンを用いて較正した。 実験で得られたエネルギー値をもつ電子配置の解析を行うために、Multichannel Quantum Defect Theory (MQDT)を用いた。この理論は特に希ガスや2電子系において成功を修めているもので、今回の鉛の解析においても最外殻の6p^2だけを考慮すればよい場合には有効であると考えられる。この理論に基づいて解析を行った結果、6p7s ^3S^0_1から6pnpの他に6pnf系列にも励起されていることが分かった。これはLS結合よりjj結合のほうがよく成立していることを示唆している。またJ=0, 1, 2についてチャンネル間相互作用をLu-Fanoプロットにより解析した。第1イオン化限界に収れんする系列に摂動を与えている、第2イオン化限界に収れんする準位の電子配置を混合係数から決定するとともに、そのエネルギー値を決定した。 今後はこの解析結果を用いることにより、第1イオン化限界から第2イオン化限界にかけて観測される自動イオン化準位の解析を行うことが可能となる。
|