高融点金属中におけるヘリウム捕獲サイトを昇温脱離法(TDS)を用いて評価するために、はじき出し損傷を起こさない約50eVの低いエネルギーから最大5keVまでのヘリウムイオン照射が可能な低エネルギーイオン銃、室温から最高約1400℃までを最大80K/secで昇温加熱できる赤外線導入加熱装置、ならびに四重極質量分析計を備えた真空分析システムを作成している。真空分析システムは大きく3つの部分に分かれており、試料ホルダーとイオン源、加熱装置を持つ主チェンバー、質量分析計のある分析チェンバー、及び試料導入用チェンバーからなり、それぞれはゲートバルブを介して接続され、独自のターボ分子ポンプで排気される。 分析チェンバーは既に調整済みであり、質量分析計がヘリウムに対して十分な感度を有することを確認した。主チェンバーについてはイオン源と加熱装置の据えつけを完了し、後者については十分な温度制御を持つことを確認した。現在イオン源の調整を行っているが、ヘリウムイオンについては期待されるビーム電流(約20μA)が得られていない。アルゴンビームでは十分なビーム電流が安定して得られているので、イオン化エネルギーの差がECR型イオン源の性能を大きく左右しているものと考えられる。現在のところプラズマ室中の電子密度を向上させるために、アルゴンとヘリウムの混合ガスを使用する、プラズマ室壁材料を現在のBNよりも仕事関数の小さい別の材料へ変更する、プラズマの付きやすさを大きく規定する磁場強度を再調整する、といった観点から改良作業を進めている。 ビーム調整の完了後は、モリブデンとニッケルをターゲットとしTDSスペクトルの入射エネルギー及びフルエンス依存性についての実験を開始する予定である。
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