本研究は、燃料ガスのバリヤ-性に優れ、且つ、高い耐放射線性を有する高分子材料の開発とそれによるレーザー核融合用燃料容器の製作を目的とした。 材料開発においては、従来より用いられているポリスチレン(PS)を基本に考えた。極性モノマーであるアクリロニトリルとスチレンを共重合し、スチレンネットワーク内に極性基を導入した(以下AS)。ASをジクロロメタン溶媒に溶かし、キャスティング法で薄膜を生成し、水素ガス透過率を測定した。ASの水素ガス透過率はPSに比べ約50%程度減少することが判明した。極性基の導入が気体透過特性に効果をもたらすことを証明したと同時に燃料の貯蔵性に優れる高分子材料開発の見通しを得た。次に、耐放射線性を検証するため、三重水素から放出されるβ線と同程度のエネルギーを持つ電子ビーム(20keV)をASに照射し、水素ガス透過率を測定した。電子ビーム照射前後における水素ガス透過率の変化は観測できず、ASは耐放射線性にも優れることが判った。 AS材料を用いて、複合エマルション法によって中空球を製作した。直径、壁厚の制御性はPS中空球の場合と同様に容易であることが判った。さらに、電子顕微鏡による観察で表面粗さが0.1μm以下であることを確認した。ASを用いて、従来のPS中空球と遜色ないものを製作可能なことが判った。 以上の結果より、燃料ガス貯蔵型高分子燃料容器開発の指針を得た。
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