核融合装置内において、プラズマと壁材料の境界プラズマ中での粒子(中性粒子、イオン、電子)の運動とプラズマ粒子衝撃中の壁材料の組成変化が2次電子放出特性に大きな影響を及ぼすことから、本年度は(1)多価イオン衝撃による2次電子のポテンシャル放出とカイネテイック放出に関する計算により得られた2次電子放出の諸特性(電子放出比、放出エネルギー分布・放出角度分布、放出統計分布等)と実験結果の比較、(2)境界プラズマ中の粒子の運動、プラズマ粒子衝撃中の壁材料の組成変化を含むプラズマ表面相互作用(後方散乱、スパッタリング、電子放出)に関する計算と実験結果の比較を行った。プラズマ対向壁材料のベリリウム、カーボン(低Z材)、タングステン(高Z材)をターゲット材料に選んだ。(1)多価イオン衝撃による2次電子放出については、カイネテイック放出に加えてポテンシャル放出を考慮したことにより2次電子放出比、放出エネルギー分布、放出統計分布は実験結果をほぼ再現でき、2次電子放出機構の定性的な説明が可能になった。2次電子放出特性の価数依存性や材料表面で生じている仕事関数の変化による効果も実験結果を定性的に説明し、詳細な情報も得られた。(2)境界プラズマ付近でのプラズマ表面相互作用については、粒子の境界プラズマ中での運動や中性粒子、イオンが多価イオンに変化する過程の詳細が分かると共に、プラズマ中の粒子の運動、プラズマ粒子衝撃中のターゲット材料の組成変化を含むプラズマ表面相互作用(後方散乱、スパッタリング、電子放出)に関して新しい情報が数多く得られ、実験結果を説明する事ができた。この計算は世界でもあまり行われておらず(特に日本)、関心を集めている。現在、(1)と(2)については独立したプログラムであり、充分利用価値は有るが、更に有効利用するために組み合わせる事を検討中である。また、個々の内容についてもプログラムを更に改良中である。
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