研究概要 |
SO_2とHFを同程度の濃度(200ppb)に調製して実験ガスとした。実験温度は25, 0, -7℃とした。25℃以外の低温条件は、研究費により購入した冷却水循環装置により冷却水を得て、作製した冷却槽内で熱交換することにより設定した。反応器に塗布した黄砂粒子は1L/minの実験ガス(SO_2またはHF)中に10時間暴露させた。実験に用いた黄砂粒子を混酸で分解して得られた金属成分の分析と、黄砂粒子のイオン交換水による抽出液中の金属成分の分析をICP-AESにて行った。 まず、実験ガスに暴露する前の黄砂粒子から溶出するAl, Ca, Fe, K, Mg, Mn, NaについてICP-AESにより分析を行った。抽出比は黄砂20mgに対し水20mlとした。その結果、Caが最も多く黄砂粒子から溶出された(27%)。FeやMnは溶出量が少なく、Feは黄砂粒子に含まれるうちのわずか0.59%しか溶出さなかった。 次に実験ガス暴露後の黄砂粒子の抽出液を分析した。研究費により新たにイオン交換カラムを購入し、抽出液中のSO_4^<2->、F^-濃度を測定して沈着量を求めた。その結果、低温条件下でSO_2やHFの沈着量が比較的多く、溶出促進が見られ、氷生成がなく、高湿度(RH60%)であったことが原因と考えられた。同様にICP-AESにより分析したCaやMgの溶出量は、温度に関わりなくSO_2の沈着量と正の相関(r=0.7〜0.8)があった。また、SO_2の沈着によりCa及びMgの溶出が促進されることがわかった。HFについてもほぼ同様であった。一方FeとMnの溶出量は少なく、SO_2, HFの沈着による溶出促進効果を明らかにするには困難であった。しかし抽出液中のFe濃度は指宿らが報告した雨水中のそれより全体的に高く、沈着したSO_2の酸化反応を促進する役割を果たすと考えられる。今後は低温条件下における黄砂粒子上でのSO_2酸化速度を明らかにし、SO_2の沈着機構の解明を進めていく予定である。
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