4月20日から8月30日の間、茨城県の恋瀬川及びその支川の4地点と流域内の水田3カ所で調査を実施した。また、面積8m^2のコンクリート製実験水田において、流入出水量管理のもとに農薬散布後の濃度変化を求めた。 実験水田と3つの水管理手法の異なる水田における散布後の農薬減少速度定数は、水管理がしっかりしている水田ほど小さく、田面水の農薬の減少は分解、地下浸透・流出に分けて考える必要があることが解った。実験水田において、水抜き後再度注入した時の田面水中の農薬存在量は、1.5日後に最大となり、水抜き前の土壌の吸着量と吸着平衡定数から推定される値に一致し、脱着反応が確認できた。 河川水中の農薬濃度は、水稲移植前に散布される除草剤のOxadiazonが4月下旬より上昇し、その後、水稲移植後に散布される除草剤のEsprocarb、Pretilachlor、Butachlor、Mefenacetが5月中旬に、殺虫剤のBPMCやMPPが5月下旬から、殺菌剤のIsoprotiolaneやIBPが6月中旬から上昇した。農薬濃度レベルが高いときの降雨時には、流量の増加に伴って流出負荷量が大きくなり、降雨時に多量に流出する結果となった。 農薬流出モデル式は、河川における農薬濃度変化を河川流量・水田からの流出水量・農薬流出濃度を用いて表すことができた。河川流量変化はタンクモデル式を用い、水田から河川への流出水量は、農業用水の水管理によって流出する分を一定量とし、降雨時にはタンクモデル式の表面・中間流出に相当する部分の流出があるとし、両者の和で表すこととした。水田内で農薬濃度は、散布された農薬がFugacityモデルを用いて求めた分配比率で水相と土壌相に分配され、水相では分解・地下浸透・越流による流出の3つの項によって減少することで表現できた。この農薬流出モデル式を用いた河川濃度変化が表現可能であった。
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