生物の環境選好性の定式化 フナ、オイカワを用い、流速、遮蔽、濁度、餌量、水深、底質、水草の茎、環境容量の各環境因子についてU字迷路がた水路を用いた選好性実験を実施し、オイカワは流れが速く、水深が深いのを好み、フナは遅い流れを好む、濁りにはオイカワよりフナが強い、などの結果を得た。これらの結果を用いて選好強度式を作成し得た。 現地観察による生物の検証データの入手 山口市古甲川において8月、9月、11月にビデオを用いた生物量調査を実施した。古甲川においては淵には生物量が多く、瀬には少ないという結果を得た。この調査地点に対し、流速、水深条件だけを考慮して選好強度式から予測される生物量分布を求めたところ、瀬に生物量が多くなるという結果を得た。計算条件に底質を加えることにより、観察値と計算値の誤差は小さくなった。残された誤差は水深の相違による照度条件によると予測された。また、1調査地点内での魚の分布についての観測値と計算値を比較したところ、計算値では流心部の生物量が多くなったが、観測値では空石積護岸近傍の生物量が多かった。 大型水槽による選好性実験 空石積護岸に対する選好性を確認するため、大型水槽実験を実施した。1m×50cmの水槽の一端に40mm径×20cmの灰色パイプを敷き詰め、護岸の穴に見立てて魚の分布を観察したところ、パイプに入る魚は少なかったもののパイプ近傍の魚の存在率が高くなった。これより、護岸の穴のような、そのものの選好強度は低くとも魚への誘引因子となる環境条件を考慮する必要があることが明らかとなった。 以上より、魚が選好する環境条件が定量的に示されると同時に、新たに考慮すべき課題が明らかになった。
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