研究概要 |
霊芝(Ganoderm lucidum)は担子菌類サルノコシカケ科マンネンタケ(万年茸)の子実体で,古来より漢方で瑞(吉)兆,不老不死の霊薬として珍重され,疲労,せき,喘息,不眠症,消化不良などの治療に用いられてきた。その霊芝栽培時の重要な問題の一つに寄生菌の寄生による害がある。研究代表者は,害菌に侵されたホダ木から分離した不完全菌Trichoderma koningiiの代謝産物の研究を行ない,培養液のBuOHエキスからシリカゲルカラム,逆相オープンカラム,逆相HPLCを繰り返すことによって,既知のトリココニンV-VIIIと共に微量成分のトリココニンIa,Ib,II,IXを得た.これらの中でトリココニンIa,Ib,IXの3つは単一化合物であり,アミノ酸分析,光学活性カラムによるHPLC分析,NMRスペクトル,イオンプレーイオン化マススペクトル,タンデムマススペクトル等のデータに基づいて,いづれも既知のトリココニンV-VIIIに類似の構造(N末端にアセチル基,C末端にフェニルアラニノールを持ち,α-アミノイソブチリックアシッドを多量に含むペプタイボール)を有すると決定した。一方,トリココニンIIはNMRスペクトルから混合物と解かったが,分離が困難であったので,混合物のままISI‐MS及びCIDスペクトルの解析を行ない,3種のペプタイボール(トリココニンIIa,IIb,IIc)が存在することを明らかにした.現在,これらトリココニン類及び類縁体の合成を行なっており,合成品を用いて構造活性相関,さらには,カルシウムチャネル活性化の機構について検討する予定である.
|