本研究では、ヘム蛋白質の活性中心に糖類結合性のフェニルホウ酸基を導入した半人工ミオグロビンの糖類に対する応答挙動を分子論的に明らかにすることを目的とした。そのために本年度は、いくつかの類縁体の合成を行い、糖類の応答性がフェニルホウ酸のホウ酸基と糖類との錯化(エステル結合)によることを明瞭にした。また常磁性NMRと円二色性スペクトル(CD)から.糖類の結合が、タンパク質の二次構造(特にα-ヘリックス領域)に影響を与え、また特にヘムクレバスの出口近傍のポリペプチド鎖がヘリックスへ巻き戻されることが示された。また同様にして行った変性実験からも糖類の結合がタンパク質全体の安定化に寄与していることが示唆された。 これらの結果から、糖類に応答した半人工ミオグロビンの活性上昇は、その二次構造レベルの変化に依存していることが分かり、分子認識部位のタンパク質への導入がタンパク質の人工機能化のための新しい市法論となることの分子レベルでの基礎付けができたと思われる。
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