まず、カルボキシル基を4つ有するポルフィリンに両親媒性α-ヘリックスペプチドを4分子結合させたポルフィリン-ポリペプチド複合体について、昨年度に引き続き溶液中、脂質二分子膜中での挙動を検討した.ここで膜中で安定に存在するため、ペプチドとしては20残基程度以上の鎖長をもつこと、通常の合成ペプチドと異なり分子全体の疎水性度をかなり高めることが必要であることが判った。これからポリフィリン自体の疎水性を高めることを検討し、ドデシルオキシ基を導入したポルフィリンを新たに合成した。このポルフィリンはペプチドを結合していない状態でもレシチン等天然脂質二分子膜の中央の疎水性部分に取り込まれる。このため従来と異なり10残基程度の短鎖ペプチドを結合させることで容易に膜埋設型ポルフィリン-ポリペプチド複合体が得られた。ここで、ポリペプチドの疎水性をさらに制御するため、フッ素原子を含むアミノ酸、ヘキサフルオロバリンを合成し、これを含むペプチドの脂質膜不安定化効果について検討した。さらに代表的な親水性アミノ酸、グルタミン酸のアナログとして、メチレン鎖がこれより1〜3長いアミノ酸の高効率合成、光学分割法を開発した。これら非天然アミノ酸を組み込んだポルフィリン-ポリペプチド複合体の合成について現在検討している。 さらに、ポルフィリン以外の光機能性原子団をポリペプチド中央部に配置させることを検討した。ビピリジルアラニンをヘリックス会合体の中央部に三分子近接するように設計したポリペプチドは、ニッケルイオンや亜鉛イオンと安定な錯体を生成することが判った。これらは酸化還元反応や加水分解反応の選択的触媒となると期待される。ポリペプチドの内部にフラビンを結合させた化合物についても検討した。これは、ヒドリド移動型反応において疑似ミセル型の基質濃縮効果を示し、優れた触媒活性が見いだされた。
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