研究概要 |
原子間力顕微鏡(AFM)を用いた1分子速度論の測定の開発のために重要な技術となる孤立1分子の観測・測定に関して,タッピングモードを有効に使うことによって成果を得ることができた. 本研究の主目標物質であるα2-マクログロブリン(α2-M)の劈開マイカ上での観察では,大気中観察において3種類の構造すなわちインタクトなド-ナツ状の構造・プロテアーゼ(トリプシン)をトラップした後の「H」型の構造・メチルアミン処理により構造変化させた後の構造を観察することができた.さらにリン酸緩衝液中でもマイカ上にくっついているα2-Mを観察することができた.溶液中で蛋白質分子を見ることができたことは意義深く,溶液中でのタッピングモードでのAFMという新しい手法の大きな可能性を示している.今後この手法を応用することで1分子速度論の研究が,蛋白質分子を対象としてできるようにしていきたい. 乾燥させたときと溶液中とでその像を比べると,まず第一にその厚みが大きく違うことがわかった.大気中で観察した場合にはかなり分子がつぶれてしまうようだ.第二に像の見え方,安定性が大きく異なった.大気中では像は安定しておりある程度形がわかるが,溶液中ではα2-Mの存在とその位置は特定できるが、変形した球形に見え,スキャンする度に形が変わる.これはα2-M分子が溶液中でかなり柔らかい事を示しているようだ.また緩衝液中においても蛋白質分子の約1/3はそのままマイカ表面上に留まっていることがわかった.
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