研究概要 |
大腸菌内で大量に発現させた高度好熱菌RecA蛋白質を精製し、以下の実験に用いた。まず、精製蛋白質が熱、pHに対して安定であるかどうかについて、円偏光二色性とATP加水分解活性を指標にして測定した。その結果、高温については75℃まで、pHについては5から少なくとも12まで安定であることが分かった。 次に、高度好熱菌RecA蛋白質と単鎖DNAとの複合体形成について、電子顕微鏡を用いて調べたところ、37℃・65℃のどちらにおいても複合体が形成されていた。一方、ATP加水分解活性を促進する単鎖DNAは、65℃では、poly(dC)>poly(dT)>poly(dA)の順で、37℃では、poly(dC)とpoly(dT)のみであった。また、単鎖DNAの構造を真空紫外域のCDで調べたところ、poly(dA)は温度による構造転移があったが、poly(dC)とpoly(dT)は無いことが分かった。これらの結果は、RecA蛋白質が単鎖DNAの構造を認識して複合体を形成する、という新しい発見を強く示唆している。(加藤他(1995)第18回 日本分子生物学会年会講演要旨集、p.379) さらに、RecA蛋白質とDNAとの相互作用をその立体構造に基づいて解析するためにX線構造解析のために蛋白質の結晶化を試みた。高度好熱菌RecA蛋白質を材料としてRecA蛋白質単独での結晶化に成功し、20オングストローム分解能に相当するX線回折像を得た。また、単鎖DNAを含む条件下での結晶化にも成功した。(加藤他(1995)生化学Vol.67,No.7,p.770)
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