研究概要 |
ワルファリン(warfarin)は、ビタミンKの拮抗剤で抗血栓薬として広く臨床応用されている。ワルファリン投与下では、ヒト血中のプロテインC濃度が著減することが知られており、我々はその原因として低γ-カルボキシル化プロテインCは選択的に小胞体内で分解されることを見いだした(Tokunaga et al.Biochemistry34,1163-1170,1995)。本年度研究では、これをさらに進展させ、(1)品質管理機構の細胞種間保存性の検討、(2)低γ-カルボキシル化プロテインCと相互作用する因子の同定、(3)キメラタンパクによる品質管理の異常分子識別機構の解明、(4)小胞体内タンパク分解酵素の同定・精製を試みた。 まず、自発的にプロテインCを産生するHepG2細胞を用い解析したところ、ワルファリン存在下ではヒト血中と同様に、プロテインC>X因子>プロトロンビンの順に感受性であり、異常タンパクの非リソソーム領域での分解が見られた。さらに、小胞体-Golgi体移行阻害剤であるBrefeldin Aにより、この分解が阻害されるため、post-ER領域での分解と考えられた。また、DSP架橋実験を行ったところ、プロテインCと、100kDa、80kDaタンパクが架橋され、それぞれGRP94とBiPであると考えられた。キメラタンパクを用いた分泌様式解析では、IX因子のGlaドメインに置換した組み換えプロテインCは、ワルファリンに対する感受性が軽減し、分泌亢進が見られたが、プロトロンビンGlaドメインに置換したキメラ・プロテインCでは、むしろ阻害的であり、プロペプチド領域との連鎖性が示唆された。また、ラット肝ミクロソーム画分に8種の合成基質水解活性を見いだし、DEAE-Sephacel、Q-Sepharose、Blue-Sepharose、Superose12クロマトグラフィーにより、60kDaを主とするシステインプロテアーゼを部分精製した。
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