研究概要 |
大腸癌の肝転移巣から精製したCEA(癌胎児性抗原)と成人大人糞便中より精製したNFA-2のN-結合型糖鎖の構造を比較解析した。その結果、NFA-2は、Type I型の1〜4本鎖複合型糖鎖を骨格としてシアル酸、フコース、硫酸による修飾を受けている。一方、CEAは、高マンノース型糖鎖を含む他、Type II型の複合型糖鎖を骨格としており、さらにシアル酸、硫酸の結合様式の変化、フコシル化の昂進といった癌性変化が見出された(Glycobiology,5,105-115)。特に、シアル酸の結合様式の変化を基にして、これを検出し得るキカラスウリレクチン-I(TJA-I)を用いて、大腸癌及び正常組織を組織染色により判別しうるという成果を得、診断法開発に向けて発展している(Cancer Res.55,1675-1679)。 さて、CEAのGPIアンカー糖鎖構造を調べるため、CEAをプロナーゼ消化後、亜硝酸分解してNaB^3H_4でGPIアンカーをトリチウム標識した。高圧ろ紙電気泳動を行うと、シアリダーゼ処理の前後で挙動が変化することからGPIアンカー部がシアル酸による修飾を受けていることが示された。また、キカラスウリレクチン-II(TJA-II)と結合する分子種が存在することからフコシル化されていることも明らかになった。さらにMALDI-MS質量分析計のデータからも、GPIアンカー糖鎖がN-結合型糖鎖同様、様々な修飾を受けていることを示しており、今後、詳細な解析を行い、その全貌を明らかにしたいと考えている。
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