TFPIは、三つ連続したKunitz型インヒビタードメインからなる阻害因子で、主として血管内皮細胞で合成され、遊離型、リポ蛋白質結合型、内皮細胞結合型として存在している。これまでに、われわれは、TFPIの阻害機構を検討し、分子内に2ケ所のヘパリン結合部位(第3ドメイン並びにC末端領域)が存在していることを明らかにしてきた。TFPIは、ヘパリン投与により血漿中のTFPI濃度が数倍に増加することから、内皮細胞結合型TFPIは、内皮細胞表面上のプロテオグリカンとの相互作用によって内皮細胞に結合していると考えられているが、その実体は明らかではない。そこで、内皮細胞とTFPIの結合部位の性質を明らかにする目的で、内皮細胞とTFPIの相互作用について検討を行った。TFPIは、内皮細胞に濃度依存的、飽和的に結合し、そのスキャッチャード解析より、内皮細胞はTFPIを細胞一個当り8.8X10^7sites、Kd=327nMで結合した。結合したTFPIの約70%がヘパリンで遊離し、ヘパリチナーゼI並びにヘパリチナーゼIIIで内皮細胞を処理するとその結合量が減少したが、コンドロチナーゼABCでは、その結合量は変化しなかった。TFPIの内皮細胞への結合は、C末端塩基性領域を欠いたTFPI-Cでは著しく減少したことから、内皮細胞との結合にはこの領域が重要であることが示唆された。しかしながら、この結合は、TFPIのC末端塩基性領域と類似のヘパリン結合領域をもつアンチスロンビンIIIが、TFPIの血漿濃度の約100倍で存在しても、その結合量はほとんど影響を受けなかったことから、内皮細胞上のアンチスロンビンIIIとは結合部位が異なると考えられた。現在、内皮細胞上の結合部位の実体を明らかにすべく、精製を行っている。
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