本研究では、酵母ミトコンドリアマトリックスに存在しているHsp70タンパク質であるSsc1タンパク質と、GrpEタンパク質ホモログであるYge1タンパク質が、機能的にどう関連し合っているのか、特に、ミトコンドリアタンパク質前駆体の、ミトコンドリア膜透過過程における、これらのタンパク質の協同的な役割を明らかにすることを、最終目標として研究を進めた。 申請者は、既に、酵母ミトコンドリアのマトリクス内で、Ssc1タンパク質とYge1タンパク質がトランジェントな複合体を形成しており、この複合体形成は、たとえばATP等のヌクレオチドの存在によって、解離することをみいだしていた。さらに詳細な生化学的解析を行なうためには、これらのタンパク質を大量に精製することが必要であると考えられた。そこで、本研究は、まず遺伝子操作の手法により、そのC末端部分に、それぞれヒスチジンのタグを導入したSsc1タンパク質、およびYge1タンパク質を遺伝子レベルで作製し、強力なプロモーターの下流に導入して、酵母細胞内に形質転換した。これらの酵母株から、ミトコンドリアマトリクスを調製して、Niイオンを結合させたヒスチジンタグに対するアフィニティカラムにより、これらのタンパク質の大量精製を試みた。その結果、いずれの場合においても、ヒスチジンタグを付加したこれらのタンパク質が、効率よく精製された。また、さらに純度を上げるために、イオン交換カラムクロマトグラフィーとの組み合わせることにより、これらのタンパク質をほぼ純粋に精製することに成功した。現在、精製したこれらタンパク質について、相互作用の解析を進めている。
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