本研究では、グルクロン酸転移酵素ファミリー1(UGT1)に属しメチルコラントレン(MC)-誘導型分子種であるUGT1A1のラット肝細胞における遺伝子発現を制御する機構について解析し、当該年度において以下に示す事を明らかにした。 1.UGT1A1遺伝子のプロモーター領域の構造 塩基配列を解析した結果、転写開始点より上流29塩基から24塩基の間にTATA boxが同定せれ、また134塩基から129塩基にかけてMCによる転写活性化に必要な薬物応答エレメント(XRE)が同定された。またこれら以外にも、314塩基から302塩基および251塩基から236塩基の二箇所に肝特異的発現に関わるHNF-4認識配列などが同定された。 2.XREの機能解析 (1)CATアッセイによる機能解析:UGT1A1遺伝子のプロモーター領域約1.1kbを含むDNA断片を上流側から段階的に決失させ、CATレポーター遺伝子と連結した融合遺伝子を作製した。これらをラット肝初代培養細胞に導入してMCによる発現誘導を調べた結果、XREを欠く融合遺伝子はMCに応答しなくなる事が分った。また部位特異的変異導入法により、XREを欠失あるいはその塩基を置換した場合もMCへの応答が消失した。 (2)ゲルシフトアッセイによるAhレセプターとXREの結合の解析:UGT1A1のXREを含む合成オリゴヌクレオチドをプローブとし、肝細胞の核抽出液を用いてゲルシフトアッセイを行った。この結果、MCで処理した細胞の核のみにXREと結合するタンパク質が現れ、このタンパク質がリガンド結合型のAhレセプターである事を示した。またXREに変異を導入したものではAhレセプターとの結合が消失する事を示した。 (3)DNase Iフットプリント法による結合部位の同定:UGT1A1のXREを含む合成オリゴヌクレオチドをプローブとし、肝細胞の核抽出液を用いてDNase Iフットプリントを行った。その結果、XREの部分がDNase Iによる消化から保護されておりXREにAhレセプターが結合する事を示した。 3.まとめ UGT1A1遺伝子の転写はプロモーター領域のXREを介してAhレセプターにより活性化される。
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