研究概要 |
大腸菌バクテリオファージλ初期オペロンの遺伝子転写制御蛋白質であるCro蛋白質のVal55をCysに換えた点突然変異体の核磁気共鳴法(NMR)による構造解析を行った。このCroV55C変異体は(1)Cro蛋白質2量体の2つのサブユニット間にCys間のS-S結合が形成され、2つのサブユニットが架橋されていること、(2)野生型と比べて大きく熱安定化していること、(3)特異的DNA配列への結合能が数分の一に減少していること、などの性質を持つ。 このCroV55C変異体についてCBCA(CO)NH,CBCANH,HNCO,HN(CA)CO,C(CO)NH,HBHA(CBCACO)NHなどの3重共鳴3次元NMRスペクトルの測定を行い、主鎖、側鎖のほぼ全ての^1H,^<15>N,^<13>C核の帰属を行った。またその過程で、蛋白質の^<15>N,^<13>C,^2Hによる同位体ラベルも行い、重水素ラベルと重水素デカップリングを利用してHN(CA)NH実験に大きな改良を施すことに成功した。この手法は分子量の大きな蛋白質の主鎖のシグナルの帰属に大変有用であると期待される。 λCro蛋白質野生型のNMRシグナルの帰属は既に完了しているので、化学シフト値の比較をすることによって立体構造の差異を見積もったところ、野生型、V55C変異体間に立体構造の差異は殆ど無いことが示された。従って、サブユニット間のS-S結合は立体構造を換えないことが判った。
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