本研究の目的は、申請者がこれまでに得た、光化学系II膜蛋白質複合体の低分解能三次元結晶を、種々の結晶化条件を詳細に検討することにより改良し、X線構造解析ができるような高分解能結晶を作製することである。今年度には次のような研究を行い、結果を得た。 温度--4℃から30℃の間で結晶化を行い、10℃-30℃で結晶を得たが、15℃において一番よい結晶ができた。 標品の純度と均一性--従来のイネ光化学系II標品を再度ドデシルマルトシドで可溶化し、ゲル濾過により精製し、結晶化を行ったが、結晶性の向上は見られなかった。また、同様な方法を用いてホウレンソウとえんどう豆からも系II複合体を精製し、結晶を得たが、分解能はイネの結晶より低かった。 界面活性剤--各種界面活性剤を検討した結果、従来のドデシルマルトシドとヘプチルチオグルコシド以外に、デシルマルトシドとMega-9が同様な結晶を与えた。 以上により、結晶の分解能が著しく向上したことは見られなかったが、これは、結晶をハンゲングドロップからX線回折用キャピラリーチューブに装填する時の溶媒組成や温度の変化による可能性もあるので、今後、このような変化を軽減するよう工夫し、高分解能の構造解析を目指したい。
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