1.オリゴ糖の単結晶化 本研究では、これまで困難とされてきた三糖以上の比較的高分子量のオリゴ糖について結晶化を試みた。その結果、アカルボ-ス(α-グルコシダーゼ阻害剤)合成の先駆物質であるマルトトリオース(三糖)誘導体2種類についてX線回折測定用の単結晶を得ることに成功した。この他にも、キチンの分解物である六糖N-アセチルキトヘキサオースや6位分岐(1→3)-β-グルカンの構成単位となる四糖についても結晶化を進めてきたが、実験室レベルで構造解析可能なほどの結晶を得るには至らなかった。しかし、一連の実験からこれまで糖の結晶化にはほとんど用いられたことのない溶媒蒸発法が結晶化に適しているなど、糖の最適結晶化条件に関する知見を得た。 2.単結晶構造解析によるオリゴ糖の構造情報の収集 2種のマルトトリオース誘導体をはじめ、二糖ではあるが、ソホロース誘導体(3種)、コ-ジビオース誘導体(2種)、ラミナリビオース誘導体(1種)の結晶構造解析を終了し、様々な結合様式を持つオリゴ糖について、それらの立体構造に関する情報を収集した。特にグリコシド結合部分のコンホメーション、糖残基に結合した置換基の配向については、分子力場計算も並行して行うことにより、糖残基一般についてこれらの部分の構造的特徴をとらえることができた。 3.多糖の構造解析 2で得た情報をもとに(1→3)-β-グルカンのアセチル化誘導体カードラントリアセテートのX線構造解析を行った。この解析は以前より進めていたものであるが、本研究で得た関連したオリゴ糖の構造情報を利用することによりはじめて構造を決定することができた。
|