細胞周期制御ではサイクリン-サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)複合体の活性制御が中心的役割を果たしている。培地中の無機リン酸濃度で発現が制御される出芽酵母のPHO5遺伝子の発現制御機構はサイクリン-CDKを介した信号伝達系であり、そのキナーゼ活性はPho81pと名付けられたアンキリンタイプのCDKインヒビターにより阻害される。以前の解析において、このタンパク質はその中央部に最小機能ドメイン、N末領域に負の制御ドメインそしてC末領域に正の制御ドメインの3機能領域に分割できることを明らかにしたが、その際このタンパク質のリン酸信号による活性化が量的変化か質的変化かが不明であった。今回、PHO81プロモーターをリン酸信号に関わらず一定の発現量のプロモーターに取り替える実験を行い、中央部の必須機能ドメインだけでも質的変化が生じていることが分かった。一方、そのN末およびC末の制御ドメイン間のin vivoでの相互作用もtwo-hybrid法により検出している。in vitroにおける各ドメイン間の相互作用については解析が進行中である。次に、そのPho81pの活性を制御する他の因子を取得する目的で、PHO81に対する高コピー数サプレッサー遺伝子をスクリーニングしたところ、PHO86とPHO88(=YBR106w)が得られた。それらの分子遺伝学的解析の結果、これらの遺伝子は共にリン酸取り込みに関与する膜タンパク質をコードしていることが分かり、膜に存在するリン酸取り込み系からPho81pへのリン酸信号の流れが示唆される。
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