II型遺伝子のコアプロモーターはTATA boxと転写開始点領域(Initiator;Inr)から構成されており、この上に基本転写因子が形成し基礎転写を行う。本研究では、酵母のガラクトース代謝系遺伝子の転写抑制因子をコードするGAL80遺伝子の転写開始領域Inrに結合するタンパク質の機能解析を行った。 1.GAL80の転写開始付近のどの領域にInr結合タンパクが結合するかをDNaseI Footprint法とメチル化干渉法により決定した。その結果、転写開始点の-18から+10に結合することが明らかになった。 2.Inr結合タンパクがInr領域に結合することがInrからの転写に必須であることを無細胞転写反応により明らかにした。 3.ほ乳類のInrは転写活性化(UAS)または抑制領域(URS)として機能する場合がある。そこで、GAL80のInrも酵母内においてUAS・URSとして機能するかを調べたが、この領域は、転写活性に影響を与えず基本プロモーターとして機能することが示された。 Inr結合タンパクをDNAアフィニティークロマトグラフィー法で精製、または、遺伝学的手法によるクローニングを試みたが、現在成功には至っていない。 今後は、Inr結合タンパクをクローニングし、さらに詳細に解析すると共に、転写開始における機能を明らかにする必要がある。
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