本研究の目的は、終脳特異的接着分子テレンセファリン(TLN)の脳における働きを明らかにするため、TLN遺伝子のノックアウトマウスの作成することである。 TLN遺伝子のノックアウトマウスの作成のために最初に、TLNの遺伝子を含むマウスゲノミックDNAのクローニングおよびそれを用いたターゲッテイングベクターの作成を行った。平成7年度にはES細胞(TT2株)由来のDNAから、TLNの全コ-デイング領域と5′上流調節領域を含むゲノミッククローンを単離し、そのクローンの制限酵素地図の作成とエクソン/イントロンの位置の決定を行い、それらに基ずいて薬剤耐性遺伝子(neomycin耐性遺伝子とherpessimplex virus thimidine kinase(HSV-tk))を組み込んだターゲッテイングベクターの作成を終了した。 次に作成したターゲッテイングベクターをES細胞にエレクトロポレーションにより導入し、相同組み替えを起こしたmutant ES細胞をneomycinによる選択培養で濃縮単離を行った。平成7年度には、エレクトロポレーションによるES細胞へのターゲッテイングベクターの導入を終え、約200個のneomycin耐性のES細胞を得ることができた。さらにPCR法およびサザン法により13個の正しい相同組み替えを起こしたmutant ES細胞を得ることができた。 現在、ノックアウトマウス作成の最終段階であるキメラマウス作成と、このキメラマウスと正常態マウスと交配させ、germline transmissionにより産まれてくるヘテロ接合体、そしてヘテロ接合体同士を交配させて産まれてくるホモ接合体(ダブルノックアウトマウス)の作成に着手したところである。
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