研究概要 |
間期核を特徴づける蛋白質を探すために、「もし間期核特異的な蛋白質が存在した場合、それを分裂期の細胞に注入すれば、細胞分裂の進行に何らかの影響を与えるはずである」、という着想に基づいてウシ肝細胞核のクロマチンを分画し、ラットカンガル-腎由来の細胞であるPtK2細胞に注入した。その結果ヒストンH2A,H2Bを含む画分中に微小核形成を誘導する蛋白質性因子が存在することがわかったので、本年度はその精製、遺伝子のクローニングを試みた。微小核誘導活性と挙動をともにする分子量25kDaの蛋白質が精製できたので、その部分アミノ酸配列を決定したところクロマチン蛋白質の一種であるマクロヒストンH2AのC末端部分であることが判明した。そこでマクロヒストンH2Aの全長およびC末端25kDa部分をPCR法によりヒトcDNAライブラリーより得て大腸菌内で蛋白質として発現させた。それぞれの蛋白質を精製し分裂期細胞に注入したが、微小核は形成されなかった。そこでC末端部分の蛋白質をマウス及びウサギに免疫し特異抗体を調製した。得られた抗体は確かにウシ肝核クロマチン画分の25kDa蛋白質を認識し、この蛋白質を画分中から吸収することもできた。しかし、25kDa蛋白質吸収後の画分にも活性は存在したため精製した蛋白質は微小核誘導因子ではないことがわかった。以上の結果から微小核誘導因子は活性画分中にメジャーに含まれる25kDa蛋白質ではなく、より微量に含まれる蛋白質であることがわかった。現在、大量のウシ肝核から精製を行う方法及びDNAセルロースカラム等のアフィニテイーカラムを用いた精製法を検討中である。
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