ペルオキシソームは真核生物に広く存在する細胞小器官であり、脂肪酸のβ酸化系をはじめ種々の機能を有している。また、先天性の遺伝病であるペルオキシソーム欠損症(Zellweger症候群など)が知られており、その一次的な病因はペルオキシソーム形成過程の障害によると考えられている。これまでにチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞より3つの異なった相補性群に属するペルオキシソーム欠損変異細胞を得ている。 本研究では、一過性発現を利用したスクリーニング系を用い、相補遺伝子のクローニングを行った。具体的には、小分けしたcDNA発現ライブラリーを作成し、ペルオキシソーム欠損細胞に導入し、相補活性のあるcDNAを含むプールを同定し、さらに陽性プールを分割し、目的のクローンを得ようとするものである。新たに作成したcDNAの発現ライブラリーを約30万個スクリーニングし、変異細胞の1つである、ZP92細胞についてその欠損を相補するPAF-2cDNAの単離に成功した。 PAF-2は分子量104kDaの蛋白であり、抗体を用いた解析により、ペルオキシソーム膜に存在することを明らかにした。PAF-2cDNAはヒトペルオキシソーム欠損症の相補性C群の細胞も相補した。本研究の結果は一過性発現系を用いたスクリーニング法の有効性を明確に示しており、今後新たに得られた変異細胞についても同様の方法で相補遺伝子の単離を行っていく。
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