未分化胚性腫瘍細胞特異的エンハンサーBOXDNAとその結合タンパク質の機能を明らかにするために以下の解析を行った。 1.BOXDNA結合タンパク質の標的遺伝子(BOXF1)のクローニング 未分化胚性腫瘍細胞F9のcDNAライブラリーから調整したcDNAをテンペレートとしBOXF1内に設定したオリゴマーとoligo(dT)をプライマーとして用いたPCR法を行った。残念ながら、BOXDNAを転写調節領域内に持つcDNAは得られなかったが、分化に伴って発現の減少するcDNAが得られた。塩基配列解析よりこのcDNAがマウスピルビン酸キナーゼM-2であることがわかった。ラットの初期胚や肝がん細胞でこの遺伝子の発現と未分化状態との関連性が報告されており、本研究はピルビン酸キナーゼM-2が未分化状態で広く働いていることを示唆するものと思われる。本研究の成果は、Biochmica et Biophysica Acta 1267(1995)135-138に報告した。 2.BOXDNA結合タンパク質の精製 未分化胚性腫瘍細胞P19細胞より、BOXDNA結合タンパク質の精製を試みた。得られた最終精製物が少量であったため充分な解析は行えなかったが、BOXDNA結合タンパク質の分子量が約45kDaであること、BOXDNA結合タンパク質複合体にはβ-アクチン様タンパク質が含まれることが示唆された。 3.TEF-1ファミリーとの相同性を利用したBOXDNA結合タンパク質のクローニング BOXDNA結合タンパク質は、そのDNA結合配列の相同性から、TEF-1ファミリーであることが推測される。stringencyを下げたノーザン法を行ったところ、P19細胞の分化が進むにつれて新たなTEF-1ファミリーと推定されるバンドが検出された。現在、degenerateなプライマーを用いたPCR法により胚性腫瘍細胞に特異的なTEF-1ファミリーのクローニングを行っている。
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