研究概要 |
中枢神経回路の解明には投射ニューロンに関する知見だけでなく介在ニューロンに関する知見の蓄積を欠くことができないが、介在ニューロンに関する知見はまだまだ少ない。小脳は中枢神経回路のなかで最も解析の進んだ部位であるが、介在ニューロンであるGolgi細胞に関してはそれが機能的に単一なのかそうでないのか、単一でないとすればいったい何種類のGolgi細胞があるのかさへ、未だ明らかになっていない。本研究課題では、この中枢神経系の介在ニューロンの代表とも謂うべき小脳Golgi細胞の生理的機能を、抗mGluR2抗体と抗mGluR5抗体を使った免疫組織化学法により、光学・電子顕微鏡下に形態学的に解析した。抗mGluR2抗体は、mGluR2と極めて構造の似ているmGluR3との交叉反応を避けるため、新たにmonoclonal抗体を作製した。解析の結果、以下の知見を得た。 1)小脳Golgi細胞は、mGluR2を発現するものとmGluR5を発現するものとの2者に大別される。mGluR2とmGluR5との両方を発現するGolgi細胞は存在しない。 2)小脳の全Golgi細胞の約85%がmGluR2を発現するGolgi細胞で、約15%がmGluR5を発現するGolgi細胞である。 3)mGluR2を発現するGolgi細胞はどの小脳小葉の顆粒層にもほぼ均一に分布するが、mGluR5を発現するGolgi細胞は小脳虫部I,II,VI〜X小葉と小脳半球の一部の顆粒層により多く分布する。 4)mGluR2はGolgi細胞の細胞体、樹状突起、軸索のいづれの部位にも分布する。これに対してmGluR5はGolgi細胞の細胞体、樹状突起にのみ分布する。 5)mGluR2を発現するGolgi細胞の樹状突起は、ほぼ垂直に分子層表層にむかうものが多いが、mGluR2を発現するGolgi細胞の樹状突起は、細胞体から放射状にのびた後分子層表層にむかうものが多い。
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