研究概要 |
神経再生過程において、神経細胞の中でいかなる現象が起こっているのかを解明するため、末梢運動神経(舌下神経、顔面神経)損傷モデル動物を用いて、神経軸索再生時に発現する未知の分子、または既知であるがその関与が考えられていなかった分子をシステマチックに検出する方法の開発を試みた。我々が用いたDifferential Display法と分子組織化学的方法のコンビネーションにより、神経再生関連分子群の検出はかなり容易になった。現在研究は継続中であるが、本手法を用いることによって幾つもの未知遺伝子や既知であるが神経再生現象に関与しているとは考えられていなかった分子群が多数検出された。未知の遺伝子に関しては現在引き続き機能解析を行っているが。既知の分子に関しては、損傷直後の神経生存にかかわると考えられるグルタミントランスポーターや、フリーラジカルスカベンジャなどが検出された(Kiryu et al.J.Neurosci.15,7872,1995)。また、成長因子受容体の細胞内情報伝達系路を活性化する分子群も検出された。以上のように本研究の目的である未知の物質の検出方法の確立は、ほぼ達成されたと考える。今後はさらに本方法を用いて検索を継続して行くことにより多くの分子群を検出し、ブラックボックスである神経軸索再生の分子基盤が徐々に解明されて行くと考えられる。
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