研究概要 |
痛覚制御機構の研究のうち延髄におけるカテコラミンニューロンからの入力制御に重点をおいて研究を進めている。下行性抑制系の延髄での中枢は大縫線核を中心とした吻側延髄の腹側部に存在するが、同部には濃いカテコラミン線維終末が分布している。このカテコラミンニューロンの起始細胞体の局在をノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンニューロンに分けてそれぞれのカテコラミン合成酵素を用いた免疫細胞化学法により検索した。結果は主に脳幹腹外側被蓋部のA1,A5,A7のノルアドレナリンとC1アドレナリンニューロン群からの投射が多く認められ、少数背外側の青斑核、subcoeruleusのノルアドレナリンニューロンからの投射も認められた。また中脳、前脳のドーパミンニューロンからの投射は見られなかった。この成果はNeuroscience Letters誌にin press中である。次に末梢神経ホルマリン刺激によるラット急性疼痛モデルを作成し脳幹におけるimmediate early gene(IEG)であるc-fos,zif268の発現を検索してみると、上記の脳幹カテコラミンニューロン群の存在する部位や大縫線核にも発現がみられた。この結果は末梢疼痛刺激によりこれらの下行性抑制系に関わるとされる脳幹の細胞レベルでも応答が起きていることを示している。これらIEGを発現する細胞が、実際にカテコラミンニューロンなのか、また大縫線核ではセロトニンやエンケファリンニューロンなのか検索中である。
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