研究概要 |
Differential display法を用いて脳内部位特異的発現を示す因子を探索し、大脳皮質に優勢発現する新規遺伝子群(申請書ではwishboneと仮に名前を付けたが、現在その分布様式をもとにpancortinと呼んでいる)を得た。クローニングの結果この分子群、中央部分に共通部(B部分)を有し、5′側に2種類(A1もしくはA2)、3′側に2種類(C1,C2)の都合4種類からなることが判明した(組み合わせは、A1-B-C1,A1-B-C2,A2-B-C1,A2-B-C2であり順にpancortin-1,-2,-3,-4とする)。 ノーザンブロット解析にてその発現を確認後、pancortinの神経組織での遺伝子発現様式を合成DNAプローブを用い(プローブはA1,A2,C1,C2部分に対応するもの)、in situ ハイブリダイゼーション法にてそれぞれの遺伝子部分ごとに検討した。その結果、嗅球、中隔野内側亜核、大脳皮質(特に2-6層)、海馬(CA1-3,歯状回)、内側手綱核、橋核において、ほぼ同じ部位にA1,C1,C2の強い発現を観察した。一方A2の発現も同様に観察されたが、そのシグナルは弱かった。この事実はpancortin-3,-4と比較し、pancortin-1,-2が同部位にて優勢に発現していることを示す。同時に背側視床(特に腹側核)にてA1,C1,C2の弱い発現を確認した。なお、この視床での発現については、個体発生を迫った検討より、生直後で強く発現した後、成長に伴い減少し、成体にて弱い発現を維持していることを確認した。 又、B部分に対応するペプチドを合成、抗体を作成した。成熟マウス大脳組織に対し、ウエスタンブロット解析を行い、それぞれのPancortin蛋白質に対応すると思われる約180,140,60,40(kDa)の陽性バンドを確認した。
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