知覚神経におけるサブスタンスP(SP)、ソマトスタチン(SOM)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生は、末梢から軸索輸送される神経栄養因子によって調節されることが示唆されている。この研究では、これらのニューロペプチドmRNAと、NGF(神経成長因子)ファミリーのレセプターをコードするtrkA、trkB、trkCmRNAの知覚神経における発現をIn Situハイブリダイゼーション法を用いて明らかにし、上述の仮説を再検討することを目的とするものである。trkA、trkB、trkCmRNAは、それぞれ後根神経節細胞(ラット)の35-40%、5-10%、15-20%に発現してた。SPをコードするPPTAmRNAは後根神経節細胞の約30%に発現しており、これらの細胞はmRNAの発現量の違いから二種類に分けることができた。つまり、mRNAを強く発現しているもの(78%)と弱く発現しているもの(22%)であり、前者はtrkAmRNAを共に発現していたが、後者は発現していなかった。CGRPmRNAは後根神経節細胞の約40%に発現しており、PPTAと同様、mRNAを強く発現しているもの(84%)はtrkAmRNAを共に発現していたが、弱く発現しているものはtrkAmRNAを発現していなかった。PPTA/CGRPmRNAとtrkB/CmRNAをともに発現している細胞はほとんど認められなかった。SOMnRNAは後根神経節細胞の約10%に発現していたが、いずれのtrkmRNAとも共存しなかった。 これらの結果は、PPTA及びCGRPの産生は、NGFによって調節されていることを示唆するが、SOMの産生調節には、いずれのニューロトロフィンも関与していないこと示している。
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