研究概要 |
本研究では開口放出における細胞骨格系蛋白質の役割を明確にする目的で、高透過性クロマフィン細胞系を用いて、主に共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いた組織化学的実験により開口放出中のアクチン・ネットワークの変動を観察し,放出実験結果との関連を考察した。 (1)固定後アクチン染色行った場合,Control細胞では細胞膜直下にリング状の濃いアクチン層が観察されるが,Ca^<2+>刺激後ではアクチン層の切断,欠落が見られた。一方,MLCK阻害剤Wortmannin(WT)処理細胞では,アクチン層の切断,消失が観察され,Ca^<2+>刺激を行ってもほとんど変化が観察されなかった。 (2)アクチンの動態変化を経時的にかつ定量的に測定するため,高透過性細胞を顕微鏡下に置き,Rohdamine Phalloidin存在下でCa^<2+>刺激を行い,細胞1個当たりの蛍光強度の変気を測定した。Control細胞ではCa^<2+>非存在下で時間と共にPhalloidinの重合作用による蛍光強度の増大が観察された。Ca^<2+>刺激を行うと,Ca^<2+>依存性アクチン切断因子により蛍光強度の増大が顕著に抑えられた。一方,WT処理細胞の場合はCa^<2+>非存在下での蛍光強度の増大が見られず,Ca^<2+>刺激を行うと時間と共にさらに蛍光強度が減少した。 (3)細胞にWT処理を行うとアクチン-ミオシン相互作用が阻害されることが予想されるので,アクチン層の崩壊はその結果を反映していると考察できるが,アクチン層が崩れているにも関わらず,Ca^<2+>依存性放出が阻害それていることは従来提唱されているバリヤ-説とは矛盾する。さらに,我々はWTによる阻害は開口という最終段階ではなく顆粒を放出可能にするプライミング過程であることを明らかにしている。 従って本研究で観察されたMLCK阻害によるアクチン・ネットワークの変化とプライミング過程の阻害はアクチン,ミオシン等の細胞骨格性蛋白質がバリヤ-としてのネットワークを作ること以外にプライミングを可能にさせる重要な役割を果たすことを示唆すると考えられる。
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