研究概要 |
本研究はGABAニューロンによるLH分泌の中枢性制御が,性成熟過程でどの様に変化するのかをラットを用いて検討した.申請者は雌性アカゲザルを使った実験で,GABAニューロンがLHRHニューロンを前性成熟期において強く抑制し,性成熟期ではこの抑制が弱まること,またこの抑制はGABA_A受容体を介していることを報告してきた. 1.雌性ラットにGABA_A受容体のアンタゴニストであるビキュキュリン・メチオダイドを投与したところ,前性成熟期群(16から17日齢),性成熟期群(30から31日齢)共に共にLH分泌に対する効果は認められず,成熟後に発情前期の午前中のみLH分泌を有意に増加させることが明らかとなった。一方,雄性ラットでは前性成熟期では有意な効果は認められなかったが,性成熟期群(30日から31日齢),成熟群(45日齢以上)ではLH分泌を有意に上昇させた.以上より,ラットの性成熟過程でのGABAニューロンによるLH分泌の制御は霊長類と異なり,性成熟に伴ってGABAによる制御系が確立してゆくこと,また,性成熟期以降はGABAニューロンによるLH分泌の抑制系に性差があることが明らかとなった。 2.GABA_A受容体のアゴニストであるムシモールを雄性ラットに投与すると前性成熟期群では影響が見られないが,性成熟期群,成熟群共に有意にLH分泌を抑制した.このことからGABAによるLHの分泌抑制機構が性成熟過程と共に成熟してゆくことがさらに支持された. 3.精巣からの負のフィードバックにGABAニューロンが関係している可能性を考え,精巣摘出を施した成熟ラットで同様にビキュキュリンおよびムシモールの効果を検討した.ビキュキュリン投与によるLH分泌の刺激効果が消失し,ムシモールはLH分泌を有意に抑制した.これらのことからGABAニューロンは精巣からのフィードバックの少なくとも一部を担っていることが示唆された. 以上の結果は,第25回米国神経科学会で既に発表し(SanDiego CA.1995,743.6),1996年3月現在Journal of Neuroendocrinologyに投稿中である.
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