研究概要 |
Fas抗原はTNF-receptor familyに属し、アポトーシス関連蛋白として知られている。最近我々は一過性能虚血によりFas抗原mRANがマウス脳内に発現される事を報告した(Brain Res 657:342,1994)。この発現機序を調べる為、各種炎症性サイトカイン誘発物質であるLipopolysaccharide(LPS)、炎症性サイトカインであるTNF-α、またはSuperoxide Dismutase(SOD)の阻害剤であるDiethyldithiocarbamate(DDC)の投与を行い、Fas抗原mRNAの誘導の有無をNorthern blot analysisにて検討した。その結果、Fas抗原mRNAの発現はsham群には殆ど認めなかった。LPS投与群では投与後3時間でFas抗原mRNAは最も強く発現し、その後6・24時間と経時的に減少した。一方TNF-α投与群ではFas抗原mRNAの有意な発現を認めなかった。またDDC投与群では投与群6時間で最も強く発現した。そこでFas抗原mRNA発現細胞の局在を調べるためin situ hybridizationを施行した所、LPS投与後3時間ではglia様の小細胞や脳室上衣細胞を脳室周囲細胞でFas抗原mRNAの発現を認めた。以上より、LPSやDDC投与によってもFas抗原mRNAの誘導が認められ、一過性脳虚血によるマウス脳内Fas抗原mRNAの発現に、ある種の炎症性機構(TNF-α以外のサイトカインを含む)やOxugen radical stressが関与する可能性が示唆された。
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