研究概要 |
1)前脳での発現パターンの解析 a)mRNAの分布 AxCAMmRNAのラット前脳での分布をin situハイブリダイゼーション法により調べた結果、各AxCAMは時空間的に異なる分布パターンを示し、胎生期にTAG-1,BIG-1/BIG-2,F3の順に発現することがわかった(Yosiharaら、1995、Tamadaら、1995)。視床下部ではBIG-2は下垂体に軸索を投射する室傍核、視索上核に、一方、BIG-1はこれらの軸索が通過する正中隆起、下垂体後葉等に発現していた。また、BIG-1/BIG-2は間脳のセグメント構造に対応するようにパッチ状に発現していた。TAG-1は翼板に強い発現が認められた。BIG-1/F3は間脳蓋板および終脳の脈絡叢に発現していた。 b)タンパク質の局在 BIG-1/BIG-2のリコンビナントタンパク質でウサギとモルモットを免疫してポリクローナル抗体を得ることに成功した。免疫組織染色により、BIG-1/BIG-2タンパク質は軸索上に局在することがわかった。 c)軸索の投射パターンとの比較 上記抗体と神経軸索を染める抗GAP43抗体との二重染色により、BIG-1/BIG-2が軸索のサブセットに発現することがわかった。 2)前脳での機能の解析 a)神経突起伸展活性 TLNおよびBIG-1/BIG-2タンパク質上で胎生期海馬ニューロンを単離培養して形態変化を観察した結果、ニューロンはTLN上では多数の太さの不均一な曲がった突起を伸ばし、これらの突起は抗MAP2抗体で強染されたのに対し、BIG-1/BIG-2上では少数の直線的な太さの均一な突起を伸ばした(Yoshiharaら、1995)。これより、TLNおよびBIG-1/BIG-2はそれぞれ樹状突起および軸索に対する伸展活性を持つことが考えられる。 b)神経結合への関与 BIG-1/BIG-2の発現が特徴的な視床下部-下垂体系をモデル系として、in vitroで神経回路形成を再現する系の確立を現在試みている。回路形成期の視床下部を取り出し、wholemountで培養し、軸索投射が正常に形成されるかどうか検討中である。
|