研究を前期と後期の2期に分けて研究を進めた。まず第一期を慢性動物の訓練と記録システムの完成に充てた。第二期は動物に電極を慢性的に植え込み、課題を実行させ、頭頂連合野と運動野で40Hz同期振動を実際に記録する時期とした。以下に、それぞれの時期における本研究の実績を報告する。 1 第一期:動物の訓練は、好奇心の強い若い動物を選択して使用したことにより予想よりも短期間で完了し、慢性ネコの訓練のノウハウを蓄積出来た。課題の管理及びデータの取り込みのプログラムも順調に進み、現在殆どバグの無い状態に出来た。またA-D変換のハードウエアを時分割を導入して改良し、16チャンネル(ch)のA-D変換ボードを96chとして使用できるようになったので実質的にチャンネル数の制限が無くなった。この結果、大脳皮質からの記録は当初の予定(計20ch)よりもはるかに多い運動野と頭頂連合野の2カ所から同時に32chずつの計64chの記録が可能になった。このシステムは時定数の切り替えによりユニット記録、電場電位記録のどちらにも使えるので今後多チャンネルの記録が必要な種々の実験にそのまま応用可能であり、本研究の成果の中でも最も重要なものの一つである。 2 第二期:訓練した動物に小脳核刺激による誘発電場電位をガイドに、16カ所の記録点があるOttosensors社の多点同時記録電極を慢性的に植え込む技術を確立した。しかしこの電極は長さが約5cm太さも0.4mmもあり、形状的に頭蓋への電極の固定が難しく、皮質を傷害し易いため、慢性状態では長時間安定した記録が難しかった。そこで現在、16本の10ミクロンの銀線を束ねてレジンで固める自作の小型の電極を用いて、形状を記録システムに合わせて、安定した記録をする方法を確立すべく努力している。
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