ラットのヒゲ運動系モデルを用いて、感覚・運動統合機序の動的側面を解明しようと試みた。先行研究からヒゲ運動野はヒゲ感覚野と相互神経線維連絡があること、および、ヒゲ運動野は上丘経由で顔面神経核にアクセスしていることが明らかになっている。本研究では、ヒゲ運動野、ヒゲ感覚野および上丘で形成される神経系に着目し、time dependent scatter diagram を用いてこれらのニューロン間の機能的結合度を指標として神経回路網の動的側面を解析した。 無拘束ラット標本を用いて、探索行動中および受動的に触覚刺激を与えられた時のニューロン活動をヒゲ運動野、ヒゲ感覚野および上丘に埋め込んだ慢性ワイヤー電極から導出・記録した。クラスターカッティング処理により単一ニューロン活動に分離した後time dependent scatter diagram を作成し、ニューロン間の機能的結合度を解析した。その結果次のことが明らかになった。(1)解析した全てのニューロンで同一ニューロン間の機能的結合度は時間的に変化した。(2)探索行動中はヒゲ運動野からヒゲ感覚野および上丘に興奮性の機能的結合度をもつ一方、受動的に触覚刺激を与えられた時にはヒゲ感覚野および上丘からヒゲ運動野に興奮性の機能的結合度をもつニューロンが存在した。 本研究を遂行するため、科学研究補助金は主として消耗品費として適切かつ有効に使用された。また、研究結果の一部は第25回北米神経科学学会で発表した。
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