スライスシールドを外して光子の3次元計測を行いノイズの影響を低減する3次元PETの構成方式について、主として計測データから画像を生成する画像再構成の観点から検討した。まず、混乱していた従来の理論を1つの統一的観点から整理し、これまで提案されてきた様々な方法は完全3次元再構成法・並べ替え法・3次元ラドン変換法の3つに分類できることを明らかにした。次に、各方法についてシミュレーション実験を行い、『完全3次元再構成法は再構成画像は高品質であるが計算時間が長い問題点がある』、『並べ替え法は計算時間は短いが円形の強いア-ティファクトが生じる問題点がある』などの事実を定量的に明らかにした。これらの事実は従来の研究であまり明らかにされていなかったもので、今後の研究の大きな参考となる結果だと思われる。 コーンビームコリメータを装着して光子の3次元計測を行い感度を向上させるSPECTの構成方法について、3次元ラドン変換に基づく新しい画像構成法を開発した。この方法は広く用いられているフィルタ補正逆投影法と比較して画質が良く、直接フーリエ変換法を採用しているので3次元ラドン変換に基づく従来の再構成法と比較して計算量が大幅に削減された。更に、数学的正しい3次元画像が再構成できるためのガンマ線カメラの軌跡についても検討し、従来の軌道の条件を緩和した新しい軌道の条件を導いた。この成果は3つの国際会議の論文として発表することができた。 これらの成果により光子の3次元計測に基づく核医学診断装置の実現に理論的に貢献することができたと思われるが、実データを用いた実験を行って理論の有効性を確認するまでに研究は進まなかった。従って、今後実用面に即した詳細な実験を行っていく必要があり、データの取得の努力を現在行っている。
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